普段はPythonを学んでいるけれど、「会社や現場ではExcel VBAを避けられない」という人へ。本記事は、Pythonで解決したい気持ちを持ちつつも、まずはVBAで切り抜けたい場面に出会ったときに役立ちます。
この記事のゴールは「VBAの壁にぶつかったときに、どうマインドを切り替え、最小限の工夫で前に進むか」を学ぶこと。
さらにPython的な視点(再利用・保守・柔軟性)も意識した解決法に触れていきます。
なぜ“非Python編”をPythonブログに書くのか?
「Pythonを勉強しているのに、現場で求められるのはVBA」というギャップは、本当に多くの人が直面します。学習のモチベーションはPythonにあるのに、業務で必要とされるのは「マクロで処理を組んでほしい」というVBA。ここで「せっかくPythonを学んでいるのに」と落ち込んでしまう人もいます。
しかし、このギャップは実はチャンスでもあります。
なぜなら、Python的な考え方をVBAに持ち込むことで、ただのVBAスクリプトが「後でPythonに移植しやすい下地」になるからです。
一時的にVBAで対応
- 配列で一括処理する → Pythonならリスト内包表記で書き換えやすい
- 遅延バインディングで環境依存を減らす → Pythonでの標準ライブラリ優先と同じ発想
- 例外処理やガード変数を置く → Pythonのtry/exceptやフラグ管理と同じ
つまり「一時的なVBA対応」も、将来のPython実装にそのまま橋渡しできます。
現場での経験を無駄にせず、VBAの知識をPython学習に逆輸入するつもりで取り組むと、学びが何倍にも広がります。
VBAに取り組むときのマインドセット
- 「一時対応」と割り切る:完璧を求めず、最低限動かす。
- 「Pythonで書くならどうするか」と比べる:VBAコードを見直す良い練習になる。
- 「共通する考え方」を探す:配列、辞書、参照、例外処理。言語が違っても根本は同じ。
症状別「こんな時どうする?」(Python的に考える)
1) マクロが動かない
環境依存を意識する
Pythonでもライブラリや仮想環境の違いで動かないことがある。VBAは保存形式やセキュリティ設定を最初に確認。
2) Missingエラー
importの違いをイメージ
VBAの参照設定はPythonのimport
に近い。遅延バインディングは「標準ライブラリに寄せる」発想。
3) 空配列でUBoundエラー
len()
と同じ発想で守る
空リストでも落ちないPythonに慣れている人は、「空配列チェック関数」を作って補うと安心。
4) シート名が変わって壊れる
変数参照に置き換える
Pythonで変数を使うのと同じで、VBAもCodeNameで“固定ハンドル”を持つ。
5) ループが遅い
配列処理はPythonのリスト内包に近い
VBAも配列に取り込んで一括処理すれば「for文の遅さ」を避けられる。
6) OneDriveで動かない
パスは常に動的に
Pythonでos.path.join
を使うように、VBAでもThisWorkbook.Path
や環境変数で柔軟に。
7) 64bit Declareが落ちる
バージョン差異は if 文で切り替え#If VBA7 Then
はPythonでの条件分岐と同じ考え方。
8) イベントが暴走
フラグ管理で守る
Pythonの再帰処理を止めるときと同じく、ガード変数で制御。
9) CSV文字化け
encoding指定を忘れない
Pythonでopen(file, encoding="utf-8")
を意識するように、VBAもコードページを指定。
10) 列構成が変わる
dict的発想
見出しをキーに列を探すのは、Pythonで辞書のキーを使うのと同じ。
VBAからPythonへシフトするときのヒント
- 配列処理 →
list comprehension
- Dictionary →
dict
- File操作 →
with open
- エラー処理 →
try/except
付録:両者の対応表で学び直す
VBA | Python |
---|---|
UBound/ LBound | len() |
Dictionary | dict |
On Error | try/except |
ThisWorkbook.Path | os.getcwd() / __file__ |
Select Case | match/case (3.10~) |
コード比較:VBAとPythonで同じ処理を書くと?
例:範囲からユニーク値を取り出す
VBA版
Function UniqueValues(rng As Range) As Collection
Dim dict As Object, c As Range
Set dict = CreateObject("Scripting.Dictionary")
For Each c In rng
If Not dict.exists(c.Value) Then
dict.Add c.Value, 1
End If
Next
Set UniqueValues = dict.keys
End Function
Python版
import openpyxl
wb = openpyxl.load_workbook("sample.xlsx")
sheet = wb.active
values = [cell.value for cell in sheet["A1:A10"]]
unique_values = list(set(values))
print(unique_values)
発想は同じ。
「辞書や集合でユニークを取る」という共通点が見えると、VBAとPythonをつなげやすいです。
結論:Python的に考える
VBAに出会うのは「Pythonだけではまだ解決できない現場の事情」に向き合うチャンス。
VBAでしのぎつつ、Python的に考えることで、両方の世界を橋渡しできます。焦らず、比べながら、一歩ずつ進んでいきましょう。